酵素処理によるゼラチンのアレルゲン性低下
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説明
<目的>麻疹、ムンプス、風疹ワクチン接種後、副反応としてアナフェラキシーを起こす例がある。従来この原因は卵成分と考えられてきたが、近年我々はこの原因アレルゲンが添加剤のゼラチンであることを見いだした。我々は抗原部位の究明と共に、ゼラチンのアレルゲン性を低下させる方法を検討した。<結果>ゼラチンアレルギー患者血清抗ゼラチンIgE抗体は、ワクチンに使用されていたウシゼラチンだけでなく、ブタ、マウス、ラット、カンガルー等のほ乳類由来のゼラチン(熱変性typeIコラーゲン)と交差反応した。また、テロペプチドを失った酵素可溶化、アルカリ可溶化コラーゲンの熱変性物に対しても反応性を示した。各α鎖に対する反応性はα2に対し特異的であった。これらのことから、従来アレルゲン性が高いと考えられてきたテロペプチド部分ではなく、α2(I)の三重らせん領域にエピトープが含まれていると考えられた。これらの情報を元に、我々はアレルゲン性が低くかつ、注射薬用微量成分の安定化作用をもつ十分な分子量をもつゼラチンの開発をめざした。熱変性ウシ皮膚typeIコラーゲンを種々のプロテアーゼで分解し、そのアレルゲン性を調べた。消化酵素であるペプシンの分解物は平均分子量が7700であるにも関わらずアレルゲン性が顕著に低下していた。トリプシン、キモトリプシン処理ではゼラチン消化断片の平均分子量が3000以下となり、アレルゲン性も低下していた。以上の結果より、ペプシンは反応初期にエピトープを含む配列を特異的に分解していると考えられた。<考察>我々はゼラチンのアレルゲン性の低下をめざして、ゼラチンの部分分解を様々な酵素で検討した。その結果消化酵素である、ペプシン、トリプシン、キモトリプシン処理が有効であることを見いだした。特にペプシン分解は、ゼラチンの分解断片が、微量成分の安定化にも十分働きうる分子量を保っており、その有効性が期待される。一般に、抗ゼラチンIgEを持つ患者において、摂食によるアレルギーの報告は少ない。ゼラチンの場合、胃でのペプシンによる分解によりアレルゲン性は著しく低下しその後更にトリプシンやキモトリプシン等の消化酵素によりエピトープが完全に分解されるため、アレルギー発症しにくいと推察される。
収録刊行物
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- Connective tissue
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Connective tissue 34 (1), 67-,
日本結合組織学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1543668945113889280
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- NII論文ID
- 110004002497
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- NII書誌ID
- AN10169901
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- NDLデジコレ(旧NII-ELS)
- CiNii Articles