初期習慣流産の夫リンパ球による免疫療法とその評価法に関する研究

書誌事項

タイトル別名
  • Studies on the Treatment of Recurrent Abortion with Husband's Lymphocytes

この論文をさがす

説明

超音波電子スキャンで胎児心拍が一度も確認されないままの流産のみを3回以上連続した習慣流産 (初期習慣流産) 患者のHLA-DR抗原の夫婦間共通性について検討し, また夫リンパ球皮内免疫療法の治療効果を判定するための臨床的指標として皮内免疫部位の皮膚反応について検討した。原因不明原発性初期習慣流産32例を対象とした。1. 習慣流産夫婦と, 3人以上子を有し, 流産等の妊娠異常の既往をもたない健常夫婦70例とを比較したが, これら二群間にはHLA-DR抗原の夫婦間共通性に差が認められなかった。2. 夫リンパ球に対する妻リンパ球のリンパ球混合培養反応 (夫婦間MLR) が治療後に低下していた症例は治療後妊娠において, 全例 (7例中7例) 流産を免れ, 低下していなかった症例は全例 (3例中3例) 流産した。3. 夫リンパ球皮内免疫部位の皮膚反応は注射を繰り返すと30例中29例で縮小した。また, その変化は夫婦間MLRの低下誘導と相関した。4. 夫リンパ球皮内免疫部位の皮膚反応が縮小してから妊娠した16例で14例 (88%) が流産を免れ, 残り2例が流産したが, 縮小しないまま妊娠した3例はすべて流産した。5. 夫リンパ球皮内免疫療法の治療効果は, 夫婦間HLA-DR抗原共通性がある群とない群とで差が認められなかった。6. 夫リンパ球皮内免疫療法後に患者血中に誘導される抗HLA-DR抗体がある群とない群とで, 治療後妊娠の予後に差は認められなかった。初期習慣流産に対する夫リンパ球皮内免疫療法は, 夫婦間HLA-DR抗原共通性の有無にかかわらず, 注射部位の皮膚反応が縮小するまで治療した後妊娠するようにすれば, 夫婦間MLRを実施したり, 患者血中の抗HLA-DR抗体の有無を確認したりしなくても, 多くの妊娠例で流産を防止できることが示唆された。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ