子宮体癌のFIGO新進行期分類(1989)についての検討 : 旧進行期分類(1983)との比較ならびに予後因子の解析

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  • An Analysis of Prognostic Significance of New FIGO Staging (1989) of Endometrial Cancer

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抄録

過去10年間に北海道大学産婦人科において手術治療を行ない, 組織分化度, 頚部浸潤, 筋層浸潤, 付属器転移, リンパ節転移の病理学的所見を確認しえた子宮体癌91例を, 1989年に公表されたFIGOの子宮体癌新進行期分類に従い再分類し, 旧分類(1983年)によるものと比較検討し, 以下の結果を得た. 1)旧分類で病巣の進展を正確に診断しえたのは, I期67%, II期11%, III期0%であり, 従来I期とされていたものの1/3に子宮体部外の進展が認められた. 2)旧Ia期とIb期との間で個々の病理組織学的因子には有意の差が認められなかった. しかし子宮体部外進展について検討すると, Ib期に子宮体部外進展の症例が有意(p<0.005)に多く含まれていた. 3)累積生存率による個々の予後因子の検討では, 組織分化度(p<0.05), 筋層浸潤(p<0.05), 頚部浸潤(p<0.005), 骨盤リンパ節転移(p<0.005)にそれぞれ有意に予後との関連が認められた. 4)Coxの比例ハザードモデルを用いた重回帰分析による検討では, 頚部浸潤(p=0.05)と新進行期分類(p=0.03)のみに予後との関連が認められた. 5)頚部浸潤例は非浸潤例にくらべリンパ節転移が有意(p<0.001)に多く, しかも頚部浸潤単独例が少なかった. 6)旧分類に基づく各進行期別の累積5年生存率は, I期87%(Ia期96%, Ib期80%), II期72%で, これら2群の生存曲線の間には有意差を認めなかった. 7)新分類での累積5年生存率はI期98%, II期67%, III期67%であった. I期とII期, I期とIII期の間で, 生存曲線には有意差(p<0.001)が認められた. 以上から, 従未の進行期分類(1983)は正確な体癌の進行を反映しておらず, これが従来の子宮体癌I期の予後を不良にしている原因と考えられた. 一方新進行期分類(1989)は病理組織学的所見に基づいて決定され, 旧分類よりも予後と相関し予後判定に有用であることが示唆された. また体癌の予後因子として子宮体部外進展の重要性が示唆された.

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