表情から読み取る感情判断と潜在的感情状態の一致と不一致(教育心理)

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タイトル別名
  • Concordance and Discordance in the Identification from Facial Expressions of Underlying Emotional States(Educational Psychology)

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抄録

本研究は,潜在する感情の状態を表わしたとされる一連の顔の刺激図に対して,観察者がそれぞれの刺激図を読み取って割り当てた感情状態が,どの程度合致するか(感情判断の一致)また合致しないか(感情判断の不一致)について検討を行ったものである.ラザルス(1980)によれば,人間の社会的関係は,他者の感情をどのように解釈するかによってかなりの程度決定されてしまうものだという.体姿勢やジェスチャーからも他者の感情の状態を読み取るための重要な情報が得られるという報告もあるが(Brosnaham,1988;Argyle,1990:参照),我々が通常手がかりとして最も当てにするのは何と言っても顔の表情である.しかし,他者の感情状態の推測には誤りが多く,特に観察者が全く精通していない異なる文化・社会的背景を持っている人物を判断するときはなおさらである.観察者の属する文化内の他者を判断するときでもさえそのような誤りが起こるのは十分考えられることであるが,感情表現の仕組みがかなり異なる文化に住む他者の場合,判断の誤りの程度はさらに強くなるであろう.69人の日本人大学生(男子26人,女子43人)が,提示された14個の白人の顔刺激に対して最も適切と判断した感情を,9個の感情の分類ラベルから選んで当てはめるという作業を行った.その結果,刺激図にもともと割り当てられている感情のラベルと観察者が刺激図に下した判断との不一致度が高い刺激がいくつか見られ,その他の刺激図では一致度が比較的高い値であった.全般的傾向としては,顔の配列に対しての感情のラベル選択における男女差が見られなかったと言える.しかし,3つの刺激図においては性差が見られる結果となった.つまり,感情を表現する側の性差,観察する側の性差,顔の表情によって表される特定の感情状態のそれぞれが複雑に相互に作用しあって,表現する側の感情に対しての観察する側の最終的ラベル付けが決定されるのであろう.以上の結果から,顔の表情と感情判断との一致度と不一致度を引き起こすと思われる要因について検討を行った.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1570009752629390848
  • NII論文ID
    110007054470
  • NII書誌ID
    AN0008887X
  • ISSN
    04523318
  • 本文言語コード
    en
  • データソース種別
    • CiNii Articles

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