畑作物の種類による跡地土壌の変化並びに後作への影響(6)

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主要夏作物の作付によるその跡地土壌の性質の変化及び後作の生育に及ぼす影響を明かにするために,陸稲,甘藷,大豆,粟及び蕎麦を栽培して,それらの作物によって吸収される各養分の全量を調査した。つぎに総吸収量を略奪量と還元量に分け,それらの数値を基礎にして,跡地の養分状態に及ぼす影響について種々検討を行った。その結果は次のように要約される。1. 陸稲は略奪作物の性格を有しており,珪酸をはじめ窒素,燐酸,加里等あらゆる養分の吸収量が多く,しかもその略奪量/還元量の比率の大きいことからも明らかなように,吸収された養分の大部分が略奪された。従って陸稲は跡地のすべての養分を最も瘠薄にする特徴を持っている。2. 甘藷は供試作物中で塩基類の吸収の多い作物であり,その跡地を酸性化する傾向は最も強いと同時に特に可給態加里を欠乏させる作物であることは注意を要するであろう。3. 大豆は施肥に対して敏感な作物であり,施肥量の増大とともに各養分の吸収量は顕著に増加した。また他の作物に比べて石灰及び窒素の吸収量が多い。しかし大豆は遊離窒素固定能を有し,且つ略奪量/還元量が比較的小さく,その上還元物の養分含有率も高いので,その跡地はNはもとより他の養分も相対的に良好な状態にあるもののようである。4. 粟は珪酸及び加里の吸収量が多く,また吸収されたものは大部分が略奪され,陸稲によく類似した性格をもっているが,しかしその程度は陸稲よりも軽微である。5. 蕎麦はあらゆる養分の吸収量が最も少く,またその生育期間も短いので休閑に類似した作用を土壌に与え,その跡地は特徴的な変化を示さないであろう。

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