日本におけるトマト潰痬病(1)

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抄録

1962年,長野県において,トマトの茎維管束部が褐変し,髄部が崩壊し,下葉が垂れ下ると同時に小葉が巻上る新しい病害が発生した。その後,各地で認められる葉柄の裂開,茎,葉,葉柄および萼などの表面に生ずるコルク状のやや隆起した小病斑,または,果実表面に生ずる鳥眼状病斑なども同一病原細菌による異った病徴であることが判明した。病原体はグラム陽性,鞭毛を持たない短桿状の細菌であり,肉汁寒天培地上で円形不透明な黄色コロニーを作る。またこの細菌はアラビノーズ,レブローズ,マンノーズ,マンニット,グリセロール,ラクトーズ,マルトーズ,シュークローズから酸を生成し,ソルビトーズ,ラムノーズ,サリシン,ラフィノーズ,デキストリン,イヌリン,スターチ,ペクチンからは酸を生成しない。また,インドール産性-,硝酸塩の還元-,メチレン青の還元-,牛乳の凝固+,リトマス牛乳の還元+,硫化水素産生+,ゼラチン溶解+(除々),アンモニヤ産生+,スターチ分解-であった。病徴および病原細菌のこれらの諸性質から,本病害はCorynebacterium michiganense (Smith) Jensenによって起るトマト潰瘍病であると同定した。なお,わが国で栽培されているトマトの内14品種を用いて行った抵抗性検定の結果,品種赤光を除いたすべての品種はこの病害に極度に罹病的であった。

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