日本でライフ・サイクル仮説は成り立っているか? Does the Life Cycle Hypothesis Apply in the Case of Japan?

抄録

ライフ・サイクル仮説は、経済学の分野において最もよく使われている理論モデルであるといっても過言ではない。本稿では、まず利己主義を前提とした最も単純なライフ・サイクル仮説について簡単に解説し、そうした後に筆者のこれまでの研究成果に重点を置きつつ、様々な分析方法・データを用いた研究を概観し、日本においてライフ・サイクル仮説が成り立っているか否かについて検証する。具体的には、人口の年齢構成の貯蓄率に与える影響に関する研究、退職者の貯蓄行動に関する研究、貯蓄目的に関する研究、遺産の重要度に関する研究、遺産動機に関する研究、利他主義の有無を検証しようとする研究、借り入れ制約(流動性制約)の重要度に関する研究を概観し、ほとんどすべての分析結果が日本ではライフ・サイクル仮説が他国以上に成り立っているということを示唆するということを示す。つまり、本稿のタイトルで示した問いに対する答えは紛れもなく「イエス」である。最後に、日本でライフ・サイクル仮説が成り立っているという結論の政策的インプリケーションについて考える。

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