屍硝子体液のUV吸収スペクトルに関する研究 : その解析ならびに死後経過時間推定への応用

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タイトル別名
  • Ultraviolet Spectrophotometric Analysis of Postmortem Vitreous Humor : Determination of the Component and Estimation of the Hour after Death

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説明

屍硝子体液にみられる紫外部吸収スペクトルの本態を究明し,その死後経過時間との相関性について検討を加えた。その結果,265nmに吸収極大がある屍硝子体液のUV吸収帯は,カラムクロマトグラフィーで5種類に分画され,さらにこれらの分画成分はアスコルビン酸,ヒポキサンチン,尿酸,タンパク成分ならびにチロシンとキサンチンなどで,該UV吸収帯はこれらの混合成分から成り立っている。中でもアスコルビン酸は他成分に較べると極めて高い吸光度(absorbance)を示した。また屍硝子体液にascorbate oxidaseを作用させると,UV吸収帯は3種類に分類された。この3種類のUV吸収帯は,ヒポキサンチン:尿酸:アルブミンの配合比によって作製した模擬屍硝子体液にも同様にみられ,さらにこの3種類の模擬UV吸収帯の種々酵素作用による変動は,屍硝子体液の該酵素作用による変動と極めて類似していた。以上のことから,屍硝子体液のUV吸収スペクトルの本態は,アスコルビン酸が主役を演じ,アスコルビン酸のabsorbance低下あるいはその吸収帯の消失に伴って,ヒポキサンチン,尿酸およびタンパクなどが脇役として関与することによってUV吸収スペクトルが形成されるものと思考される。さらに,この屍硝子体液のUV吸収スペクトルの法医学的応用面について検討した結果,ascorbate oxidaseを作用させた屍硝子体液の二波長法によるヒポキサンチンの差吸光度と死後経過時間との間に相関性が認められた。

収録刊行物

  • 北里医学

    北里医学 17 (5), 453-464, 1987-10-31

    北里大学

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