低用量アスピリンの心・血管事故予防効果
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説明
アスピリンは虚血性心疾患や脳血管障害の予防に有効で,欧米ではその至適用量について議論されている.一方,本邦ではその至適用量に対する詳しい報告はない.そこで,1992年から1999年まで当循環器内科で治療した心筋梗塞患者からなる回顧的コホートを用いて,アスピリン服用群(50mg/日および81mg/日)の心・血管事故(心事故,脳血管障害,血管死)を抗血小板薬非服用群のそれと比較検討し,予防効果を判定した.心事故とは致死性,非致死性再梗塞,心臓突然死,及び心不全死と定義し,脳血管障害とは致死性,非致死性脳梗塞,並びに致死性,非致死性脳出血と定義し,血管死とは心臓死,脳血管死,肺塞栓性死,出血性死,他の血管起因性死,原因不明の死亡を含めた血管起因性のものと定義した.心事故発生率は,アスピリン50mg服用群792例中12例(1.5%),15.7件/1,000人・年,アスピリン81mg服用群430例中5例(1.2%),17.1件/1,000人・年,非服用群825例中29例(3.5%),34.3件/1,000人・年であり,服用群で有意に低値であった(アスピリン50mg群vs抗血小板薬非服用群p<0.05,relative risk 0.42 ; 95%信頼区間0.21〜0.83,アスピリン81mg群vs抗血小板薬非服用群p<0.05,relative risk 0.35 ; 95%信頼区間0.14〜0.87).心・血管事故発生率は,アスピリン50mg群17例(2.1%),23.0件/1,000人・年,アスピリン81mg群11例(2.6%),17.5件/1,000人・年,非服用群35例(4.2%),43.4件/1,O00人・年であり,アスピリン50mg群で有意に低値であった(p<0.05).全死亡率もアスピリン50mg群10例(1.3%),アスピリン81mg群7例(1.6%),非服用群28例(3.4%)で,アスピリン50mgは非服用群と比べて有意に低値であった(p<0.01).両群間で患者背景に差があったため,患者背景中毎のsubgroup analysisをおこなったが,ほとんどの患者背景において服用群の心・血管事故発生率は非服用群より低値であった.交終要因を調整した多変量解析ではアスピリン50mg群が有意な心事故,心・血管事故予防因子と検出された.また,アスピリン81mg群では脳出血2例があったが,50mg群ではなかった.以上,本邦ではアスピリン1日50mg群で有意な心・血管事故予防効果があり,出血性合併症が減少する可能性が示された.
収録刊行物
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- 近畿大学医学雑誌
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近畿大学医学雑誌 28 (4), 335-347, 2003-12-25
近畿大学
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1571135651978411904
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- NII論文ID
- 110004299806
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- NII書誌ID
- AN00063584
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- ISSN
- 03858367
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- CiNii Articles