日本近海産ネズミイルカの成長と頭骨の形態

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  • <Mem. Natn. Sci. Mus., Tokyo>Growth and Skull Morphology of the Harbour Porpoises in the Japanese Waters

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ネズミイルカ, Phocoena phocoena (LINNAEUS, 1758)は沿岸性の種で, 北半球の寒冷海域に生息している。英国の海岸に漂着する鯨類のうちではもっとも数が多く, 全体の約40%を占めている。日本の北方海域では, ネズミイルカが沿岸の定置網や沖合の流し網にときどき羅網することが知られている。本研究では, 日本近海で採集したネズミイルカ15頭(雄6頭, 雌9頭)を使用して, その成長と頭骨の形態を解析し, 他海域のネズミイルカとの比較を行った。年齢は歯の縦断面薄片(10∿20μm)を作成し, 脱灰, 染色後, 象牙質およびセメント質に形成される染色層の縞数で推定した。使用した標本はすべて国立科学博物館に保管されている。日本産ネズミイルカは, 同じ成長段階の北大西洋産ネズミイルカに比較して, 体長と頭骨が大きく, 体重も重いが, 雄の睾丸重量は逆に軽かった。吻の形態では, 日本産ネズミイルカは北大西洋産ネズミイルカに比較して, 吻長は相対的に長く, 吻基部幅は相対的に狭かった。黒海産ネズミイルカの吻の形態は両者の中間形を示していた。これらの形態的差異のみならず, 上記3海域のネズミイルカは地理的にも隔離していることから, 本種には北太平洋, 北大西洋および黒海にそれぞれ別の系統群が存在するものと推察される。一方, 北太平洋の東西両海域のネズミイルカは, 他海域のネズミイルカに比較して, より類似した成長様式と頭骨の形態を示しているが, 2∿4歳(体長 : 120∿150cm)の個体では, 日本産ネズミイルカは東部北太平洋産ネズミイルカよりも大きい頭骨をもつことが示された。したがって, 北太平洋東西両海域にも, それぞれネズミイルカの別系統群が存在することが示唆された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1571417126926832128
  • NII論文ID
    110004313087
  • NII書誌ID
    AN00379635
  • ISSN
    00824755
  • 本文言語コード
    en
  • データソース種別
    • CiNii Articles

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