説明的文章の構造認定の方法に関する試論 : 読解活動における文章構造の理解
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説明
本発表では,中高生の読解指導の中心的ジャンルである説明的文章を構造的に理解するための方法について,基礎的な考察を行った。構造認定のための基礎的言語単位としては,市川(1978),佐久間他編(1990)などに規定されている「文段」を利用し,認定の手順としては,各文段ごとの展開を局所的・具体的に追うA段階と,それを発展させて大局的・抽象的に文章構造を捉えるB段階とに分けた。まずA段階では,「文段の機能」「文段の種類」「文段の連接」を認定し,その全体像を明確に把握するため,これらの図式化を行う。「機能」は主に文段の位置やその内容を手がかりに決定されるもので,「開始・展開(発展・転換)・終結」といった種類に分けられる。但し,一つの文章の中にこれら全てが出現するというわけではない。「種類」は,文章のジャンルをもとに文段内容の性質を表すもので,「説明的文章」では「事柄(主要・副次)・説明・意見」が挙げられる。「連接」については「展開的・拡充的・分断的」の3種類を提示した。次にB段階であるが,ここでは「統括の位置」「推論式」「配列」を認定する。「統括の位置」は文章構造認定において重要な要素とされてきたが,これに「演繹・帰納・追歩」といった推論の方法や「全体-部分」「問題-解決」といった配列を加えて文章構造を考察することで,具体と抽象の両面から文章を見ることが可能となる。特に「配列」は,従来の日本語の文章論では,文章中の部分的な関係を認定するために用いられてきたが,これを全体構造にも援用すること,そしてその関係を大きく「拡張型」「進展型」と分けて下位分類としての具体的な関係を整理することによって,実践における活用性を高めることができる。また,こういった手順による文章構造の理解は,論理的思考の育成や表現活動における文章構成力の向上にも役立つと考えられる。今後は,理論的側面を整備し,現場での応用性の高い方法論へと発展させていくことが必要である。
収録刊行物
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- 國語學
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國語學 51 (2), 163-164, 2000-09-30
日本語学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1571417127053123200
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- NII論文ID
- 110002533637
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- NII書誌ID
- AN00087800
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- ISSN
- 04913337
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- CiNii Articles