平間寺蔵「高野大師行状図画」考―十巻本系第六巻の検討をかねて―

抄録

神奈川県川崎市にある平間寺は、川崎大師の通称で知られる真言宗智山派の名刹である。開創は大治三年(一一二八)と伝えられ、古くから厄除大師として人々の信仰を集めてきた。本稿で取り上げる「高野大師行状図画」一巻(以下、平間寺本と称する)は、近年、この平間寺の所有に帰したものである(注1)。第六巻のみの端本であるが、丁寧な描写と美麗な彩色が施された優品であり、大師伝絵巻の新たな作例として注目される。ところが、昨年十二月に行った調査の結果、本絵巻は高知県土佐清水市足摺岬の金剛福寺に伝存する同名の絵巻と元来は一具のものであることが判明した。本稿では、まずその点を明らかにし、次いで同系統の作品と比較して、本絵巻の位置付けを考察することにしたい。

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