1-C-2 同時特異値分解とその構造定理(つくばOR学生発表(3))

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説明

行列の特異値分解は,最小2乗法をはじめとして,主成分分析や行列近似など,ノイズを含むデータの解析手法において,基本的な道具である.数学的には,与えられた(長方)行列の両側から別々の直交行列をかけて対角化することに相当する.本研究では,複数の行列に対する同時特異値分解を考える.一般には,すべての行列を同時に対角化できるとは限らないので,(同じ形の)ブロック対角行列への分解を狙う.すなわち,長方行列A_1,...,A_Nが与えられたとき,P^TA_1Q,...,P^TA_NQが同じ形のブロック対角行列となるような直交行列P,Qを求める問題である.通常の特異値分解では,与えられた行列を特異ベクトルと呼ばれる特徴的な方向と,特異値と呼ばれるスカラーとに分解するが,同時特異値分解では行列が複数になるため,特異ベクトルが高次元化し,特異値がスカラーから行列に変わると解釈できる.本研究では,任意に与えられた複数の長方行列に対し,その同時特異値分解が本質的に一意に存在することと,その構造を完全に記述する定理を示す.この定理は行列Aに対する特異値分解とAA^T,A^TAの固有値分解の関係を,行列の集合へと拡張した定理となっており,行列*代数の構造定理として知られている定理と密接に関連している.また,同時特異値分解を求めるアルゴリズムも与える.提案するアルゴリズムは行列*代数の既約成分分解をサブルーチンとして用いる.構造定理から,(通常の意味での)特異値分解が複数の行列に対して同時にできるための必要十分条件も得られる.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1571698602523549568
  • NII論文ID
    110007383927
  • NII書誌ID
    AN00351206
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • CiNii Articles

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