慶応期における民衆の打ちこわしについて

抄録

日本近世の都市における打ちこわしについては階級闘争研究の領域において、これまでにその歴史的役割や社会的位置についての検討がおこなわれてきたといえる。しかしながら打ちこわしの行動自体の評価については、都市社会構造の民衆内部での社会的矛盾や対立に関する存在証明として扱われており、「世直し」の言葉に代表されるような政治.社会的変革性を重要視する立場から、打ちこわしの行動は「歴史的限界」があるとされている。それゆえ特に幕末維新期における都市の打ちこわしは、政治・社会的危機の状況下での「世直し」騒動といったような反政治権力的「暴動」として、民衆が封建社会の秩序を克服していく変革意識や行動に対しての補助的な役割しか与えられておらず、いまなお民衆の打ちこわし行動自体に対する意識やその運動構造や論理に即して検討をおこなう研究がなされていないものと考えられる。

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