12 カナダ・フレーザー川における日本人漁業者の漁場利用 -日記と視察報告書から-

書誌事項

タイトル別名
  • The Fisheries Usage of the Japanese Fishermen in the Fraser River Basin in Canada -From the Research of Diaries and Inspection Reports-

説明

本稿では日記類と視察報告書から、カナダ日本人漁業者に関する漁場利用を考察する。その際に、特にカナダ西岸のフレーザー川流域のサケ刺網漁業、およびキャナリー(サケ缶詰工場)での作業工程について報告する。 和歌山県東牟婁郡古田出身の前川佐一郎(1915~2005 年)が実父・勘蔵(1882~1978年)の渡加や、その後の様子を記した手記を精読すると、当時のサケ刺網漁業に関する漁場利用が読みとれる。これにより、漁船は無動力であり、漁場まで動力船に牽引されていた様子や、日本人漁業者の役割分担がわかる。また、英語を理解する先住者は動力船を付与され、無動力船で漁獲されたサケの収穫を任されていた。 生物学者であり、後に政界へ転進した山本宣治(1889~1929 年)は、青年期のカナダ滞在時に日記を書き綴っている。1909 年7 月1 日~ 8 月25 日までスティーブストンでサケ刺網業に従事した彼の日記には、後の生物学者の片鱗を窺わせるような漁場利用についての的確な記述がある。特に8 月の漁繁期には、未明の午前3 時頃から深夜12 時頃まで刺網漁業が行われていたことは、サケ缶詰産業の季節的、かつ集約的な労働状況を示すものである。 1882 年に設立された大日本水産会は、同年に『大日本水産会報』を創刊し、1916 年に『水産界』と改称した。この会誌に発表された宮田彌治郎の報告書からは、20 世紀初頭のカナダにおけるサケ缶詰工場の様子が詳述されている。

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