GOSAT-2搭載TANSO-FTS-2の熱赤外バンドによる温室効果ガス観測

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抄録

GOSAT(Greenhouse Gases Observing Satellite)搭載のTANSO-FTS(Thermal and Near Infrared Sensor for Carbon Observation-Fourier Transform Spectrometer)はCO2の短波長赤外吸収帯と熱赤外波長吸収帯の両方をカバーしており,CO2のカラム平均濃度と鉛直プロファイルを導出することができる。TANSO-FTSの熱赤外バンドによるLevel 2(L2)のCO2鉛直プロファイルの公開データはVersion 1(V1)リトリーバルアルゴリズムで処理されている。熱赤外バンドのV1のL2 CO2鉛直プロファイルは,上部対流圏では検証データに対して南半球で0.1%以内,北半球で概ね0.5%以内で一致しているが,下部・中部対流圏ではどの季節,どの緯度帯においても1-1.5%の負バイアスが存在していることがわかっている。大気中のCH4については,湿地等の自然起源の放出源の他に,化石燃料,水田,反芻動物の消化管,バイオマス燃焼等の人為起源の放出源がある。地上で放出されたCH4は,大気中のOHとの反応で減少しながら上部対流圏及び下部成層圏に輸送される。CH4の発生源は生物由来のものが多く,各発生源からの発生量の推定には不確定性が大きい。さらにアジア域では,水田で大量に放出されたCH4がアジアサマーモンスーンに起因する上昇気流によって上空に輸送され,地上のみならず上部対流圏においても高濃度のCH4が観測されることがある。AIRSからは中部・上部対流圏のCH4の鉛直プロファイルも導出されており,南アジアにおいて7月から9月にかけてアジアモンスーン起源のプリューム様の高濃度CH4が観測されている。GOSAT/TANSO-FTSの熱赤外バンドのV1のL2 CH4鉛直プロファイルは,複数の衛星搭載センサー及び地上FTSによるCH4鉛直プロファイルの観測データと比較されている。これらの相互比較の結果から,低緯度についてはTANSO-FTSのCH4データは他の観測データと概ねよい一致を示すものの,高緯度では両者の差が大きくなることがわかっている。TANSO-FTSの熱赤外バンドのV1のL2 CH4リトリーバル処理では一酸化二窒素(N2O)も同時推定されているが,TANSO-FTSのN2Oデータの解析から,アジアモンスーン性の高気圧循環で輸送されたインドの施肥由来のN2Oによって,夏季に地中海東岸の上部対流圏でN2Oが高濃度になることが明らかになっている。

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