キリマンジャロにおけるバナナの生産・販売の特質

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抄録

拙稿で論じたように、ルカニ村(タンザニア北部・キリマンジャロ山の西斜面(標高1,500~1,700メートル)にあるチャガ人(キリマンジャロ山の住民の総称)の1農村)においては、トウモロコシ、豆類、バナナ、牛乳などの複合経営によって、食料用産物の最低限の収穫水準が維持されている(「収穫の安全保障」)。またそれらを販売することが増えているが、自家消費分を確保した上での「漸進的販売」であり、市場調達せずにすんでいる。最低限の食料消費の水準が維持されているのである(「食料消費の安全保障」)。同じくバナナと牛乳は、生活必需品(山中で生産できない農畜産物、被服・身の回り品)を購入するための十分な額で満たされた「財布」として機能している。その「財布機能」によって、最低限の生活必需品消費の水準が維持されている(「生活必需品消費の安全保障」)。以上の「食料消費の安全保障」(←「収穫の安全保障」+「漸進的販売(自家消費分の保管)」)と「生活必需品消費の安全保障」を実現し、最低限の家計水準の維持に努めるのが「女性産物」の役割である。その家計安全保障を追求する「女性産物」とは対照的に、コーヒーをはじめとする「男性産物」は、経済合理性、利益最大化を追求する(販売収入の主な支出費目は、次年度の農業経営費、家屋建設費、教育・医療費、社会開発費)。両者を明確に区分するが、どちらかに特化することはなく、両者のバランスを重視する。それがチャガ人の農家経済経営の特質である。

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