沖縄の聖域景観とその保全に関する調査研究

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抄録

現在、内間御殿の敷地内には、数百年を超すフクギの樹木が林立している。その植栽状況から、ある時期に人工的に植えられたことは間違いないだろう。これらのフクギ林は、今では内間御殿の史跡の重要な構成要素の1つになって、その歴史景観を形成している。これらのフクギ林が、いつごろ植栽されたのか、その歴史検証については、十分に行われていない。国の史跡指定を受けている内間御殿のフクギ林が、重要な歴史景観要素の1つとみるなら、その由来について、科学的な根拠にもとづいて、調べておく必要がある。ところが、2015年6月下旬頃から、この内間御殿のフクギの根元が周辺の石垣を壊しているとして(地震で崩れたとの見方もある)、また西側の住宅地に倒木の危険があることなどを理由に、西原町文化財課から依頼を受けた造園業者によって、伐木や枝切りなどが行われ、数百年かけて形成されてきた聖域の景観が崩れ始め、盆栽化したフクギ林に改悪されつつある。この状況に接して、危機感を覚え、新聞紙上(2015年7月10日付の琉球新報の記事、同年7月14日の論壇)と同年7月22日付の文化庁長官宛ての要請文などを通して、その取扱い方について注意を喚起したところであるが、一度決められたお役所仕事は改められることなく、事態は最悪の方向に進みつつある。2013年3月、西原町文化財課からの依頼を受けて、当時、私(仲間)が所属していた琉球大学農学部森林政策学研究室のメンバーを動員して、この内間御殿のフクギ林の分布・胸高直径・樹高などの悉皆調査を行ったことがある。その成果は「西原町国指定史跡内聞御殿保存管理計画書」の中に掲載されている。これまで切られたフクギ林はかなりの数に上っている。中には雌雄が合体した数百年になる貴重なフクギ巨木や、米軍の焼夷弾を受けても今なお生き続ける戦災木もある。これらは歴史を語る生き証人でもある。この実態を後世の人々に伝える責務があると考え、以下、我々が調査した資料と伐採の現状について記録しておくことにする。

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