日本の太平洋沿岸産スジイルカの捕獲

書誌事項

タイトル別名
  • <Mem. Natn. Sci. Mus., Tokyo>Catch of the Striped Dolphin off the Pacific Coast of Japan

この論文をさがす

説明

スジイルカ (Stenella coeruleoalba) は暖海性の種類で, 日本沿岸では黒潮の季節変動に対応して, 夏は北海道沖まで分布をひろげ, 冬は紀伊半島沖まで南下することが知られている。本研究では, スジイルカの捕獲資料の解析, 捕獲個体の年齢組成の分析, および生物量の推定を行なった。 伊豆半島東海岸の川奈では, 明治21年12月17日にイルカ漁業を開始した。しかし, 第二次世界大戦中に戦前の捕獲資料が消失した為, 本研究では昭和24年以降の捕獲資料を用いて, 捕獲頭数の変動を明らかにした。この変動要因については, 高速探鯨船の導入, 川奈と富戸両漁業組合によるイルカ漁業の共同経営および天候状況の観点から言及した。 スジイルカの歯の象牙質およびセメント質にみられる生長層の縞が一年に一層形成されることから, 3,456個体(雄 : 1,779,雌;1,677個体)の歯を用いて, 捕獲されたスジイルカの年齢組成を明らかにした。最高年齢は, 雄では45.5歳, 雌では37.5歳であった。運動能力の劣る若い個体は, 群が沖合から追込まれる途中でしばしば脱落する為に, 個体数が相対的に少ない。また, 性的成熟に達する前の雌は雄に比較して捕獲数が少ない。この為, 雄は5.5歳, 雌は11.5歳でピークを示し, それ以後, 雌雄しもに指数関数的に減少する.5.5∿45.5歳の間で計算した雄の年間死亡率は13.2%, これは11.5〜37.5歳の間で計算した雌の年間死亡率の15.3%よりもやや低い。 捕獲したスジイルカの生物量を, 各年齢の個体数と平均体重から計算した。雄の生物量は192トンで, 雌の180トンよりやや大きい。未成熟個体の年間死亡率は不明であるが, ここでは, 雄では0〜13.2%, 雄では0〜15.3%の値を使用して, 日本沿岸に生息するスジイルカの総生物量の推定を試みた。その結果, 雄では8,115〜9,133トン, 雌では7,324〜8,450トンと計算された。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1572543026833570688
  • NII論文ID
    110004312976
  • NII書誌ID
    AN00379635
  • ISSN
    00824755
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • CiNii Articles

問題の指摘

ページトップへ