水田単作経営における機械化発展の機構

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抄録

1)農作業機械化の発展機構を,個別経営内で明らかにしようとして,水田単作地帯の一農家を精密調査した。2)機械化の過程: この農家は,耕耘から管理迄一貫的に利用していた畜力を,昭和25年に歩行用2輪型トラクタにおきかえた。そのために人力段階に逆戻りした除草労働の軽減を図って,2,4-D撒布機・動力除草機を自製する。更に,昭和28年にトラクタを乗用3輪型におきかえ,高度の機械化稲作体系をきずき上げた。3)機械化の成果: 水稲作の反収が増し,所要労力が減じ,労働強度が低くなった。また,耕種様式の変更と相まって,雇傭労働が減じたばかりでなく,労働配分がよくなり,藁加工,用畜飼育等の新しい経営部門が拡大して,現金収入が増加した。しかし,田植え・刈取り等の人力作業は,まだ相当の雇傭労働力に依存している。また,枕地の処理等に畜力利用が残存している。これらの排除及びトラクタの能力と経営規模との不均衡の解決が,経営合理化上の今後の課題である。4)機械化の機構: 経営内の条件(大規模単作・耕作負担面積過大・畜力利用技術の体系化等)から生ずる農作業の不合理性が,経営外の与件(農地改革・耕地整理・トラクタ国産化等)と結びついて,経営主の改善意欲を生み,経営主の主体的条件によって機械化が推進される。その間に具体的契機(耕馬の病死・4Hクラブ員との共同購入計画等)を触媒として,段階的な発展が行なわれる。

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