農業用水の効率的利用を目指した節水型水田灌漑技術の構築と圃場環境

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わが国では耕作放棄地の拡大が見られる中で,近年,農業生産法人によって農地の利用集積が行われ,経営規模の拡大が進められている。こうした農業地帯では,乾田直播栽培を積極的に導入することによって農作業労働の省力化を図っている。また,都市化や工業化が進み水需要の急増によって河川の水源量が時期的に逼迫し,土地改良区や農家において水管理労働の増加が問題となっている地域もある。こうした問題を抱える地域では,水需要ピークの緩和を図るための新しい水利用体系を構築するとともに,水管理労働力を軽減するための新たな灌漑技術の構築を模索している。一方,温暖化の進行によって,夏季の高気温時に水田内での水温上昇による高温障害を回避するための水管理手法として,深水灌漑による水管理技術の構築が検討されている。深水管理については,すでに寒冷地において急激な気温低下時に水田内の水温維持を図り,水稲の冷気温障害を回避する水管理技術として定着している。これに対して,温暖地域において灌漑用水が冷水温の環境下にある場合に,水稲の冷水温障害を回避するべく昼間水止め灌漑を取り入れている地域もある。このように,わが国では,水資源の効率的利用を目指した節水型水管理や水温制御型灌漑技術の構築について地域的な取組みがなされている。そこで本研究では,水資源が逼迫し恒常的な取水制限を強いられている矢作川流域において,冬季代かきと深水無落水灌漑方式による不耕起乾田直播栽培方式を試行的に取り入れた水田灌漑地区において,農業用水の効率的利用を目指した節水型水田灌漑技術の構築と圃場環境への影響について検討するものである。

収録刊行物

  • 水利科学

    水利科学 (330), 19-40, 2013-04

    水利科学研究所

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