近世武蔵の在村蘭学医・小室元長と弟子の生活

書誌事項

タイトル別名
  • The life of Dutch medicine studies doctor Gencho-Komuro and his disciples in Musashi country of modern times
  • キンセイ ムサシ ノ ザイソン ランガクイ コムロ ゲンチョウ ト デシ ノ セイカツ
  • キンセイ ムサシ ノ ザイムラ ランガクイ ・ コムロ モト チョウ ト デシ ノ セイカツ

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説明

近世日本において蘭学興隆の濫觴は、八代将軍徳川吉宗の享保の改革の一環である“洋書輸入一部解禁”にあると筆者は考える。これにより、漢文に訳された西洋の進んだ学問が、日本人の知識層に大いに受け入れられた。医学・科学・物理学・天文学・化学などの学問の分野において、大きく進展したことは事実である。医学の分野では蘭方医学を目指す若者が増え、後に傑出した人物を輩出する塾が誕生する。東の順天堂、そして西の適塾である。  しかし、それより20年も早い時期に、江戸から16里も離れた武蔵国の番匠村で蘭学医塾“如達堂”を開塾した人物がいた。この村の医者小室元長である。彼は賀川流産科を専門とし、回生術により難産の患者を多く救命してきた。いち早く西洋医学の先進性を認識し,蘭方医学を学び、それを実践し門弟を育成した。この塾では人命を扱う医師として、儒学に基づいた高い倫理意識が強く求められた。塾の門弟たちは初め、儒学を学び次に中国の歴史を学ぶ。その後に蘭方医学に取り組むことになる。住み込みで寝食を共にしながら始まる医師修業、密接な人間関係が培われたことと推察する。こうした門弟たちの交流関係を考察していくと、幕末から明治にかけて医療の分野で活躍した人物が多数浮上してくる。そうした意味で、小室元長は日本の先進医療の開拓者と言える。

収録刊行物

  • 史学研究集録

    史学研究集録 44 90-71, 2020-03

    國學院大學大学院史学専攻大学院会

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