いわゆる指示副詞の歴史的推移の一考察 : 「サ」「ソウ」を中心に

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説明

現代語の指示詞は,指示代名詞と指示副詞を併せてコ系(近称)・ソ系(中称)・ア系(遠称)という整然とした3体系にまとめることができる。しかし,古代語の指示詞はこの近称・中称・遠称で観察すると,指示代名詞と指示副詞を並列的に整った体系として捉えることができない。本発表は,この一見別の体系を形成しているかのようみえる古代語の指示代名詞と指示副詞を,直示・照応・観念という用法から捉え直すことにより,それらの相違が見せかけだけのことで,やはり両者は同体系の指示詞として深く関係しながら並行的に変化してきたものであることを主張した。その中で具体的に述べたのは次の通りである。(1)上代の指示代名詞は直示用法を持つカ行系列(語頭にコを持つ)と照応・観念用法を持つサ行系列(語頭にソを持つ)の対立であった。指示副詞の「カク」(カ行系列),「シカ」(サ行系列・但し観念用法の例は無し)も同様の対立であった。(2)中古では,カ行系列が照応用法を持ち,サ行系列の指示代名詞が一部直示用法を持つこと以外は上代と同じである。また,直示・観念用法を持つ「カノ・カレ」等の指示代名詞はこの中古で発達した。(中古以降のサ行系列の指示副詞は「サ」)(3)中世になると,ア系の指示詞が発生・発達し(指示代名詞は中古から僅かに見られる)直示・観念用法を持つようになる。そして,サ行系列は観念用法が見られなくなるとともに,直示用法を獲得する。これで現代語と同じ体系となる。(4)先に示したように,上代・中古のサ行系列の指示副詞「シカ」「サ」は直示用法を持たなかったので言語的文脈・観念しか指示できなかった。その為「カク」(カ行系列)が持つような【動作/作用/変化の様態】用法はなく,【言語的内容】【確認・断定・同意】用法のみであった。

収録刊行物

  • 國語學

    國語學 52 (1), 82-, 2001-03-31

    日本語学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1572824501936672256
  • NII論文ID
    110002533682
  • NII書誌ID
    AN00087800
  • ISSN
    04913337
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • CiNii Articles

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