汽水湖油ケ淵の水質分布(第1報)

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抄録

汚濁した汽水湖油ヶ淵の表層水の短期水質変動について,水温,pH,DO,EC,TB,COD等の定点連続計測値を用いて検討し,以下の知見を得た。(1)日周期変動以下の短期水質変動は,潮汐,気象擾乱等を背景とする湖水の成層攪乱,吹走流と,光合成,呼吸等の生物作用とが主な原因となっている。(2)湖内の潮汐は水門により抑制されているが,5月末から9月までは湖への淡水流入量が増加するため潮差が1m前後あり,下げ潮時に対応する水質変動がみられる場合がある。この期間以外は,降雨時を除き,潮差は約30cmとなり付随する湖流は弱く,潮汐に対応する顕著な水質変動はみられない。(3)塩濃度差による比較的安定した成層が形成される冬季(12月~2月)においては,成層の乱れは風速約3m/sec以上,底泥の攪乱を伴う成層の破壊は風速約10m/sec以上のとき起り,それぞれ数分~数時間の不定形の水質ピークが観測される。(4)冬期北西風のように一定の風向の風が持続する気象条件下では吹走流を契機とする鉛直循環流によって上記水質項目やクロロフィル濃度の表層水中水平分布に偏りがみられる。(5)実際の湖水質の変動パターンは上記のような種々の要因による変動が重なっているため複雑ではあるが,風,降水量,湖水位など湖水の流動,流出入に関連する情報と比較することにより,短期的な変動についてはその大部分が説明可能であった。

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