青森県太平洋沿岸の海岸クロマツ林における津波被災状況等について

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抄録

青森県は太平洋,日本海,津軽海峡と三方を海に囲まれ,加えて陸奥湾が津軽,下北両半島に抱かれており,海岸線延長が約796kmにも及んでいる。このような地形と海況により,日本海側では晩秋から春にかけての北西の強烈な季節風,太平洋側では春から夏にかけての冷湿性偏東風(ヤマセ)がもたらす飛砂と潮風に苦しめられてきた。海岸の砂丘地帯の集落では「田畑は無論のこと家屋まで砂に埋没し,毎日掘りおこして生活してきた」(青森県西地方農林事務所ほか,1982)と言われ,まるで,昭和37年に刊行されて映画にもなった安部公房の長編小説「砂の女」を彷彿とさせるような,長く果てしない砂との戦いの生活が現実にあったものと思われる。青森県における海岸林の造成は,日本海側では1682年に津軽藩による新田開発の一環として行われ,330年を超える歴史がある。また,太平洋側では1856年に防風林や養魚林の造成を目的に植林が始まったとされ,150年以上の歴史がある。現在の海岸部は,往時の状況が想像できないほど広大なクロマツ林に覆われ,その面積は5,000haを超えるだろうと言われている(青森県森林組合連合会,1993)。現在,内陸では当然のように人々の生活が営まれているが,これらはまさに,先人たちが長い年月と労力をかけて整備してきた海岸林の恩恵によるものであると言える。

収録刊行物

  • 水利科学

    水利科学 (347), 121-139, 2016-02

    水利科学研究所

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