20. インプラント術前レントゲン撮影像での下顎管の描出状態とそれに影響する生体因子

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インプラント術前でのレントゲン診査は骨状態を把握する上で必須であり,特に下顎臼歯部においては下顎管の位置,走行を把握することが重要である。下顎管のレントゲン撮影像上での描出にはその周囲の骨梁の状態が反映する。骨密度は加齢,性別などの宿主因子により影響され,さらに歯槽骨では歯牙の喪失により低下する。従って,患者の顎骨の骨梁状態は様々であることが推測され,それがレントゲン像での下顎管の描出にも影響する可能性が考えられる。しかし,実際のインプラント術前患者における下顎管の描出状態の詳細な報告はなされていない。本研究では平成12年1月から12月にかけて本学付属病院でインプラント術前診査として下顎臼歯部のパノラマ(OP)およびCT撮影を受けた全患者22名の臼歯部下顎骨30側の術前OPおよびCT像における,オトガイ孔,下顎第一および第二大臼歯相当部下方の下顎管の描出状態を比較し,描出状態に影響する生体因子(性別,年齢,歯牙の有無)について検討した。さらに,下顎管中心から皮質骨内面までの最短距離と描出スコアとの関連について検証した。その結果,インプラント術前診査として行ったOPおよびCT撮影法により,下顎管は部位によって異なった描出状態を示すことが判明し,特にインプラント治療での頻度が高く,咬合機能回復に重要な下顎第一大臼歯部の下顎管がいずれの方法でも見えにくい傾向にあることが示された。下顎管の描出状態は性別や年齢に影響されず,また臼歯の喪失に無関係であることが示唆された。第一大臼歯部では皮質骨内面から離れているほど下顎管描出状態が低下するが,第二大臼歯部ではその傾向がなかったことから大臼歯部の下顎管周囲の骨梁が咬筋停止部に近接するほど発達している可能性が推測されるが,これらの現象の説明にはさらなる検討が必要であると考えた。

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