比較の基準を表す「より」「ほど」「くらい」について
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「より」「ほど」「くらい」には《比較の基準》を表す用法があり,以下の構文では,『Aがその程度性において最高のもの(こと)である』という共通の意味を表す(したがって,三者は交換可能である)とされている。(1)Aヨリ/ホド/クライ…もの(こと)はない。本発表では,事態認知の違いが助詞の選択に反映している(したがって,認知レヴェルでは三者は交換不可能である)ことを以下の方略を用いて主張した。(2)a.BはAヨリ 大きい/ 大きくない。 注 この表現が容認されるのは「BはAヨリ大きい」という発言あるいは認識を否定(否認)する場合に限られる。 b.BはAホド ^<??>大きい/ 大きくない。 c.BはAクライ 大きい/^<??>大きくない。(2)の言語事実から,「より」「ほど」「くらい」はそれぞれ,話者が(任意の程度性に関して)AとBの間に以下の「関係」を認めている場合に限り,生起可能であると考えられる。(3)・B>A⇒「ヨリ」(文の極性は〈肯定極性〉) ・B<A⇒「ホド」(文の極性は〈否定極性〉) ・B≒A⇒「クライ」(文の極性は〈肯定極性〉) 注 実際のところ,「ホド」の生起には,[B<A]という客観的事実の認識と[B=A]という主観的意識<ex.願望>の二つが関与しており,[B=A]と認定したいとする意識が[B<A]の客観的事実によって破棄されるという心的プロセス(つまり,『…の点でBはAに及ばない』という認識)が,「ホド」の生起に重要な役割を果たしている。 以上により,(1)の論理構造は次のように表示される。(4)・[[Aヨリ…もの(こと)が少なくとも一つある]ない]→「Aヨリ…もの(こと)はない」(否認の表現) ・[…の点でA以外のどんなもの(こと)もAに及ばない]→「Aホド…もの(こと)はない」(否定的命題主張の表現) ・[[Aクライ…もの(こと)が少なくとも一つある]ない]→「Aクライ…もの(こと)はない」(否認の表現)
Journal
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- Kokugogaku : studies in the Japanese language
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Kokugogaku : studies in the Japanese language 51 (2), 173-174, 2000-09-30
The Society of Japanese Linguistics
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1573105976913388544
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- NII Article ID
- 110002533649
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- NII Book ID
- AN00087800
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- ISSN
- 04913337
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- CiNii Articles