太宰治の書風 : 「偽造太宰治書簡」を中心として

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説明

この度、細江光氏により、偽造と確認できる川端康成宛の太宰治の葉書が発見され、「偽造太宰治書簡」の資料が紹介されている。偽造とされる「川端康成宛葉書」と、昭和一一年六月二九日付「川端康成宛書簡」の宛先、宛名、差出人住所の書体を綿密に比較し、個別に検討を加えていくと、双方にはかなりの差異が認められる。特に、起筆の打ち込みと角度、収筆のはらいに顕著な違いがみられる。さらに、文字の正確さ、速度、水平垂直の造形原理、肥痩差等、かなりの違いがみられる。従って、問題の葉書は、明らかに偽造葉書だといえる。おそらく、 「書」に手慣れた者の意図的な韜晦や作意を施したものであろう。

収録刊行物

  • 京都語文

    京都語文 (5), 84-111, 2000-03-31

    佛教大学国語国文学会

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