琉球在来豚(アグー)の効率的繁殖技術の確立(5)

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抄録

琉球在来豚(アグー)で多く認められる不明瞭な発情徴候を示す個体群(発情不明瞭群)の繁殖効率向上を目的に、発情不明瞭群における膣内粘液電気抵抗(VER)値と性ホルモン濃度の推移との関連性について検討した。1.発情徴候が不明瞭で、かつVER値が周期的な変動を示す個体群(発情不明瞭群TypeA)の血漿中エストロジェン(Estradiol-17β;E2)は、発情徴候が明瞭な個体群(正常発情群)と類似した動態を示した。しかし、発情不明瞭群TypeAは、正常発情群よりE2の上昇開始時期が約36時間遅く、最高濃度に達するまでの時間も約29時間短かった。2.発情徴候が不明瞭で、かつVER値が周期的な変動を示さない個体群(発情不明瞭群TypeB)は、個体ごとに異なるE2動態を示し、規則性は認められなかった。3.発情不明瞭群TypeAの血漿中プロジェステロン(Progesterone;P4)は、正常発情群と類似した動態を示したが、P4上昇は、正常発情群より約44時間早く開始された。いっぽう、発情不明瞭群TypeBでは、持続的なP4の上昇は認められなかった。4.発情不明瞭群TypeAの血漿中黄体形成ホルモン(Luteinizing Hormone;LH)は、正常発情群と類似した動態を示したが、LHサージは正常発情群より約16時間早く認められた。5.発情不明瞭群TypeBのLHは、規則性が認められず、LHの増減を不規則に繰り返す個体とLHが低濃度で持続する個体が認められた。6.VER値とE2濃度との間には負の相関性(P<0.01)、P4濃度ならびにLH濃度の間には正の相関性(P<0.01)が認められたことから、VERの測定は卵巣状態の推察に有効であることが示唆された。以上のことから、発情不明瞭群TypeAは、卵巣からの各ホルモンが不均衡な状態であることが示唆され、発情不明瞭群TypeBはホルモンの分泌異常で多様な卵巣機能不全の状態であると推察される。そのため、発情不明瞭群でもVERを指標とした適切なホルモン処置により受胎率を改善できる可能性もあり、ホルモン療法による処置も今後、検討する必要があると思われる。

収録刊行物

  • 試験研究報告

    試験研究報告 (46), 51-58, 2009-07

    沖縄県畜産研究センター

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