林相分類のためのオブジェクト画像解析手法の開発

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抄録

本研究では,航空写真などの高解像度画像を用いた正確かつ効率的な林相分類図の作成を実現するために,新たな手法を提案する。まず,1) オブジェクトベースの領域分割において問題となる樹冠の日向と日陰の影響の除去に関する課題を解決する。森林を対象とした画像では,樹木の日向と日陰に相当する非常に小さい領域が交互に出現することから,実際の林相に相当する程度のおおまかなオブジェクト領域を生成することが困難である。そのために,高解像度画像だけでなく,高解像度画像から作成する低解像度画像を併用する階層的な領域分割処理手法を提案する。提案する領域分割処理手法により生成される各領域を一つのオブジエクトとして定義する。次に,2) オブジエクトベースの画像解析の際に問題となる林相の分類に用いるテクスチャ特徴の選択における課題を解決する。そのため,航空写真の判読技術者が経験的に判断材料としている樹冠の大きさや形状,樹木の配置や並びといった形態的な特徴を記述することが可能な統計処理手法を検討し,日向/日陰領域のパターンや,日向/日陰の境界線のパターン,局所構造パターンなど,森林の形態的特徴を記述するためのテクスチャ特徴を提案する。さらに,3) オブジェクトベースの画像解析の際のもう一つの問題である林相の分類に用いるスペクトル特徴の利用に関する課題も解決する。解決に当たっては,画像の撮影条件や地形条件の影響を軽減するための手法として,画像の正規化処理,ならびに,日向/日陰領域のパターン抽出処理により樹冠の日向領域のみのスペクトル情報を抽出し,この情報をスペクトル特徴として利用するといった方法を提案する。提案手法を用いてオブジェクト領域ごとに特徴量を算出し,最近傍法(Nearest Neighbor Classification) を用いて樹種や林相の分類を行う。提案手法の有効性を検証するために,実際の検証サイトにおいて,提案した手法を適用した結果と航空写真判読による結果を比較する。また,林相分類の際に使用する特徴量の選択が解析結果に対してどのような影響を与えるのかを検討する。最後に,本研究で提案するオブジェクトベースの画像解析手法と,従来用いられてきたオブジェクトベースの画像分類手法の分類結果を分類精度や処理時間の観点で比較する。

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