The blind trechine beetles of the genus Kurasawatrechus from the Southern Japanese Alps

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  • 南アルプスに見られるクラサワメクラチビゴミムシ類

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南アルプスでは, 4種の地中性チビゴミムシ類が, 5カ所の異なった地点からこれまでに見つかっている。いずれもクラサワメクラチビゴミムシ属 Kurasawatrechus のもので, しかも同一の種群に含まれる。そのうちの2種は, 入笠山を模式産地として記載されたものだが, 一方は釜無山脈の北西部にかなり広く分布していることが, 最近の調査でわかった。残りの2種は新種で, この論文に初めて報告した。4種の種名と既知の 産地は, 次のとおりである。1) タカネメクラチビゴミムシ K. brevicornis S. UENO-三伏峠, 北沢峠2)ニュウガサメクラチビゴミムシ K.longulus S. UENO-入笠山3)カマナシメクラチビゴミムシ K.kawaguchii S. UENO-入笠山, 北沢峠;風穴(諏訪市湖南南真志野龍雲寺山)4) モリタメクラチビゴミムシ K.moritai S. UENO-安倍峠同一の種群に属するとはいうものの, これらの種は2系統に区分できる。タカネメクラチビゴミムシとニュウガサメクラチビゴミムシとは, 雄生殖器の構造からみて同じ系列の種であり, 外見上のいちじるしい相違にもかかわらず, 同一の祖先から分化してきたものと考えられる。しかし, カマナシメクラチビゴミムシは系統が異なり, 地理的にあまり分化していないだけでなく, 標高の低い場所では凝灰岩洞からも発見されている。モリタメクラチビゴミムシは, 外見がカマナシメクラチビゴミムシによく似ているが, 雄個体が見つかっていないので, 正確な帰属はわからない。注目すべき事実は, これら2系統のメクラチビゴミムシ類が, 入笠山と北沢峠で同所的に生息することである。それも, 同じ石の下や, わずか数リットル程度の石まじり土壌の中から採集されるので, 厳密な意味で共存しているものと考えざるをえない。チビゴミムシ類の分化は, 地理的な隔離によって引き起こされる場合が多いので, 南アルプスにおける共存例はかなり特異である。事実, 異なった近縁の2種が同所的に生息する例は, クラサワメクラチビゴミムシ属では南アルプス以外のどこからも知られていないし, ほかの属のものでも日本では例がきわめて少ない。クラサワメクラチビゴミムシ種群の異なった 2 系列は, 分布域(本州中央部)の全体を通じて認められるので, その分化が南アルプスで起こったとは考えられない。異なった系列に属する祖先種が, おそらく時期を違えて南アルプスに定着し, 環境条件のよいところでは, それぞれの子孫のあいだに共存関係ができあがったのだろう。

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  • CRID
    1573387451763704320
  • NII Article ID
    110004312906
  • NII Book ID
    AN00379635
  • ISSN
    00824755
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • CiNii Articles

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