雀啄術が筋硬度に及ぼす影響の超音波診断装置による検討− 筋膜および筋中での比較 −

書誌事項

タイトル別名
  • Effect of the technique taught in acupuncture practice on muscle hardness: Comparison in fascia and muscle

抄録

【目的】はり師・きゅう師養成校において、学生に指導する基本的な刺鍼中の手技である雀啄術を筋膜 および筋中に実施し、筋硬度の変化を観察した。【方法】研究内容について同意が得られた森ノ宮医療大学教職員で、刺激部位に問題を有さない 8 名を 対象とした。被験者に安静仰臥位を指示した後、左右の前脛骨筋に筋膜刺激(Fascia: F 群)およ び筋中刺激(Muscle: M 群)のいずれかを実施した。介入順序は PC で作成した乱数に従ってラ ンダム化した。前脛骨筋における刺入部位は、筋硬度が高い部位とした。使用した鍼はセイリン 株式会社製ディスポーザブル鍼 50mm 20 号鍼で、超音波診断装置で鍼尖部の位置を確認しながら 刺入した。目的の深度に達した後、1 秒間に 5mm以内の上下 1 往復を行う雀啄術を 10 回実施した。 筋硬度の評価は、超音波診断装置 ( キャノンメディカル社製 Aplio500) を用いたエラストグラフィ 法で測定した。測定は刺鍼前、切皮後、雀啄刺激後、置鍼 5 分、10 分時点、抜鍼直後、抜鍼後 5 分、10 分時点の計 8 回とした。【結果】両群ともに鍼刺入前値と比較して有意な筋硬度変化は認められなかった。F 群では置鍼中に筋 硬度の低下傾向を示した。M 群では筋硬度の上昇傾向を示した。両群の刺入前値に対する変化量 を算出して群間比較を行った結果、置鍼 10 分後に有意(p<0.01)に F 群の方が低値を示し、そ の傾向は抜鍼 10 分後まで継続した(p<0.05)。【考察】学生に指導する基本的な刺鍼中の手技である雀啄術では、筋硬度の低下は認められなかった。 しかし、F 群と M 群で異なる経時的変化を示し、群間に有意差が認められたことから、F 群の方 が筋硬度を低下させる可能性が考えられた。養成校教育では、鍼刺入時に深部組織の硬度変化を 鍼抵抗感覚から理解するように指導することが多い。しかし、本研究で用いた手法では明確な筋 硬度変化は認められなかった。一方、刺激組織の違いによる差は検討の余地があった。以上の結 果から、学生への技術指導について再考の必要があると考える。

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