農業情報管理システム「GeoMation Farm」

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説明

日本の農業では,従前からの課題である「労働力不足」「耕作者の高齢化」,「担い手不足」,「耕作放棄地の増加」,「営農指導員不足」が深刻な問題となっている。農業就業人口の平均年齢は65.2歳から66.5歳へと上昇しており,これは一般的な企業で考えると定年を超えた人達が過半数を占めていることになる。労働力不足と耕作者の高齢化に歯止めがきかない状況にある。また,日本の農地470万haのうち38万haが耕作放棄地であると発表されており,今後も増加傾向にあると考えられている。耕作放棄地がもたらす問題として,「病害虫の発生・拡散」,「雑草繁茂」,「野生害獣の隠れ家」,「用排水路の管理困難」,「災害防止機能の低下」,「不法投棄場の増加・景観悪化」が挙げられており,これらの対応が急務である。さらには営農指導員(農協職員等)の業務多様化により,農薬や肥料の専門的知識を持つ有識者が減少しており,専門的知識の継承が難しい状況にある。これらの課題解決に向けて,著者らは2003年に農業情報管理システム「GeoMation Farm(ジオメーションファーム)」の開発に着手し,現在までに農業協同組合を中心に全国で約50の団体で採用されるまでになった。GeoMation Farmは地理情報システム(以下,GIS)技術を活用して,作物,生産者,収量,品質など農地に関連する情報を一元管理し,活用する製品である。また,農地の情報を活用するアプリケーション群として,生産履歴の記録を支援し農薬の適正使用をチェックする生産履歴管理,衛星画像を利用した生育解析,土壌分析結果に基づいた施肥設計なども提供している。これらを組み合わせて利用することで,栽培履歴と作物の収量や品質との関係を視覚的に把握し,生産性の均一化を図る肥培管理を行うことによって農薬や肥料等の生産費を減らすことが可能となり,コスト削減や環境負荷軽減にも役立てることができる。さらには生産者ごとの圃場作付けや土壌分析値,使用した農薬や肥料の情報から営農指導(農業の経営や技術向上の指導)サービスの提供が可能である。本稿では,著者らが開発したGeoMation Farmのシステム全体構成について述べた後,GeoMation Farmの核となる「圃場・土壌情報管理システム」,製品群の一つである農機の位置を地図と組み合わせて管理する「農作業管理システム」について紹介し,最後に今後の課題と解決に向けた具現策を述べる。

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