水稲の早期栽培地帯における湛水土中直播栽培法に関する研究(3)

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抄録

湛水土中直播栽培において,出芽・苗立ちを良くし,初期生育を良好にする水管理法についてポット,コンクリート枠及び圃場において検討を行った。結果の概要は以下のとおりであった。1. 播種直後から出芽始期の落水は,初期の出芽を遅らせた。また,出芽盛期の落水は,出芽率を向上させた。しかし,いずれの場合も最終的な出芽率及び苗立率は殆ど水管理の影響を受けなかった。2. 湛水条件は落水条件に比べて地温を高く保つ効果が高く,特にそれは最低地温で高かった。5月上旬に播種した場合,湛水条件は落水条件に比べ,もっとも大きい場合には,最高地温で4.1℃,最低地温で2.2℃高かった。3. 播種直後から出芽揃い期までの落水が土壌の酸化還元電位に及ぼす影響は小さかった。4. 出芽盛期の落水は浮苗及びころび苗の発生を抑える効果が高かった。5. 出芽揃い期以降に,芽が水面から早く出るように浅水に管理することにより,草丈が徒長することがなく,乾物重が重く,また,根の伸長が旺盛な良い苗を得ることができた。6. 千葉県のように,4月下旬から5月上旬に播種を行う場合には,湛水土中直播栽培の播種後初期の水管理は以下のようにするのがもっとも良かった。播種後出芽盛期までは保温のため湛水条件を保ち,出芽盛期には浮苗・ころび苗の発生を抑えるため落水を行う。出芽揃い期以降は徒長せず乾物重が重く,根生長が旺盛な苗を得るため浅水に管理する。

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