事故性と安全性 : 交通事故経験生徒に関する心理学的分析

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説明

学校安全教育の一環として、女子高校生について事故性ならびに安全性に関する心理学的分析を目的とし、その人格面、知覚-運動機能への検討が行われた。対象群は、事故経験群22名、安全性群20名、統制群20名である。その結果、1. Y-G自己診断法では、事故群は一次因子としての情緒不安定性・社会不適応性が著しく、主観的であること。さらにD尺度(抑うつ性)、C(気分易変性)、N(神経質)、Co(不満性、非協調性)、R(衝動性、のんきさ)において安全性群との間に有意差があった。T尺度(思考的内向)は、Rと逆方向に移動し、ずれが大きく、情緒不安定性をふまえた物事にこだわる傾向が示唆された。これに対し、安全性群は、適応因子の一つであるCo尺度において統制群よりも安定的で、不満性は少なく、対人関係においてもより適応的であることを示した。2. グレペリン精神作業検査では、大きい誤びゅう量・V字型落ち込みを示す曲線が事故群に多い。そして興奮性・情緒不安定性との関連が考察された。また、休憩効果率の低下、誤びゅう量、V字型落ち込みのうちいずれか2つを共に有する曲線が、事故群に有意に多いことが明らかになった。3. Porteus Maze Testでは、特に質的誤り評点で事故群が高得点を示た。無思慮性、計画性のなさ、注意維持力の低下、自己統制の欠如、衝動性、不安定性が事故群の特徴としてあげられ、反応の正確度、運動型が事故と関連の深いことが論ぜられた。4. 精神反応速度、共応動作実験の結果、平均速度などに差は明らかでなかったが、安全性群はそのほとんどが中位の速度レベルにあった。5. 反応時間の測定で、赤色光刺激への単純反応において事故群と安全性群は差があり前者の遅いこと。事故集団の成員は、反応時間の変動性が大きく、実際行動に安定を欠くことが示唆された。6. 事故群をとりあげた場合、従来の男性運転手で得られた結果と女子高校生を対象としたわれわれの結果との共通性の多いことから、事故経験者に、一様の人格次元の存在が考察される。本研究は、日本学校安全会交通安全研究指定校(本学附属中学・高等学校)としての立場で実施されたおのである。研究の一部ならびに具体的指導事例は、第4回学校安全大会(日本学校安全会主催、交通安全部会、於東京)において、共同研究者である、本学附属高等学校教諭村田俊郎により発表されたものである。この研究の実施にあたり終始、和歌山大学教育学部助教授・真行寺巧・堀内英雄両先生から御教示、助言を賜りました。またポーチュース・迷路テストの紹介、その研究資料は、前京都少年鑑別課長・京都大学教育学部講師、現高知少年鑑別所長、林勝造先生から頂きました。これらの諸先生に深く感謝いたします。

収録刊行物

  • 信愛紀要

    信愛紀要 10 47-68, 1969

    和歌山信愛女子短期大学

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1573668926656199808
  • NII論文ID
    110001244230
  • NII書誌ID
    AN00119361
  • ISSN
    03893855
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • CiNii Articles

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