副腎結核との鑑別が困難であったangiotrophic lymphomaの1例

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説明

73歳,男。平成5年4月にLDH高値を伴う不明熱を主訴に入院。肺炎の診断で抗生剤にて加療され退院したが,退院後もLDHは軽度高値であった。平成6年6月,2か月間続く弛張熱を主訴に再度来院。LDH 1666 IU/1,腹部超音波検査にて両側副腎腫大を認め入院した。結核の家族歴を有し,白血球数正常,CRP高値,ツ反陽性,ACTH高値などから,結核,または悪性腫瘍の副腎浸潤と不全型副腎不全の合併と考え,抗結核薬を投与しつつ原発巣の検索を進めたが,短期間で意識障害,肝腎不全に陥り死亡した。死亡直後に得られた副腎の病理組織学的検討からB細胞性悪性リンパ腫と判明し,同時に採取された腎皮質では腫瘍細胞の糸球体毛細血管内への著明な浸潤が認められた。本例はいわゆるangiotrophic lymphomaの1例と考えられるが,不明熱,副腎腫大などの臨床経過から副腎結核との鑑別が困難であった。また,神経症状出現後,わずか1週間で急速に病状が進展し死亡した稀な症例と思われた。本疾患は特徴的臨床像に乏しく,疑い例では積極的な生検が早期診断の上で重要と思われた。

収録刊行物

  • 北里医学

    北里医学 25 (2), 189-194, 1995-04-30

    北里大学

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