心房細動症例の予後

この論文をさがす

抄録

対象は,国内生命保険会社7社において,生命保険加入時の心電図所見で心房粗細動(コード27)の記録のある契約,経過件数合計12,917件と,心研において1981年1月10日から1998年10月30日までに心房細動と診断された年令20才以上の4,731症例(経過件数で12,970件)である。生保の死亡例には,死因調査を行い,心研の症例は基礎疾患の有(PLUS群)無(NONE群)で分け,これらについて,年代別,性別,経過年度別に死亡指数を中心とした比較検討を行った。基礎表としては生保標準生命表1996,及び人口動態統計表を用い,有意差検定はP<5%を有意とした。【結果】生保6社(1社は不承諾相当にて保有件数なし)の症例の死亡指数は,83から180の範囲で,基礎表の同一な生保5社の合計(男9,856件,女933件,合計10,848件)では,全体で138(男131,女245)で,男女間に有意差(P=4.1%)を認めた。死因,死亡年齢,死亡年月日の判明している178例(男158例,女20例)の死因分析においては,期待死亡率の割合に比し,本疾患に関連すると思われる心・脳血管疾患による死亡が男女とも有意に多かった。本傾向は,若年群においてより顕著で,70才以降では有意差は認められなかった。心研の症例は男2,886例,女1,845例の合計4,731例。平均年齢は,59.4±13.2才で,観察期間は最長17.8年,平均3.1±3.9年。死亡数は340例(男237例,女103例)であった。死亡指数は,全体で195(男188,女213)で,若年群で有意に高く,男女別には有意差があるとは言えなかった。基礎疾患別検討では,NONE群805例(男588例,女217例)に対し,PLUS群3,926例(男2,298例,女1,628例)で,NONE群でより男性の比率が多い傾向にあった。死亡指数は,NONE群135に対し,PLUS群203で,両群に有意差(P=1.8%)を認めた。経過年度別死亡指数は,第一年度が286と,第二年度以降165に比して有意(P<0.1%)に高く,本傾向は,特に若年群で顕著であった。基礎疾患の数は第二年度以降の死亡指数に影響し,第一年度の死亡指数には群間の有意差は認められなかった。超過死亡率は,全体で12.8‰(男15.1,女9.8),第二年度以降8.7‰(男9.5,女7.8)で,第二年度以降の60才代までは10‰前後でほぼ一定であった。

収録刊行物

被引用文献 (1)*注記

もっと見る

参考文献 (17)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ