低酸素馴化がイネ子葉鞘の嫌気耐性に与える影響(Plant Prod. Sci. VOL5, NO3 和文要旨)

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説明

幾つかの植物の芽生えの幼根では,あらかじめ緩やかな低酸素処理をしておくと,通常は生存できない強い嫌気条件下でも生存できるようになる.しかし,現在までに,低酸素処理が植物の地上部の嫌気耐性に与える影響は殆ど明らかになっていない.そこで,低酸素馴化がイネの嫌気耐性に及ぼす影響を解明するために,イネ芽生えに24時間の低酸素前処理(H-PT)をした後に24時間の嫌気ストレス(0%酸素)を与えた.H-PTをしたイネ芽生えの子葉鞘の生長量は低酸素前処理をしなかった(N-PT)イネ子葉鞘の生長より大きく2.1倍であった.また,H-PT終了時に,イネ子葉鞘のアルコール脱水素酵素とピルビン酸脱炭素酵素の活性は,それぞれN-PTのイネ子葉鞘の5.3倍と3.6倍に増加していた.嫌気ストレスを与え始めると,イネ子葉鞘には直ちにエタノール生産がおこるが,エタノール生産量はH-PTのイネ子葉鞘でN-PTのイネ子葉鞘より遙かに大きかった.嫌気ストレスを与えた最初の6時間のH-PTのイネ子葉鞘のエタノール生産速度は,N-PTのイネ子葉鞘の2.8倍であった.また,嫌気ストレスにより,子葉鞘のATP含量は直ちに減少するが,H-PTのイネ子葉鞘は,N-PTのイネ子葉よりATP減少の度合が著しく少なかった.以上の結果は,H-PTは,嫌気条件下でアルコール発酵を急速に誘導しATP含量を維持することによりイネ子葉鞘の嫌気耐性を増加させていることを示唆している.また,本研究により,植物の幼根で発見された低酸素処理による嫌気耐性獲得の仕組みがイネ子葉鞘でも同様に働いていることが明らかになった.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1574231876652557184
  • NII論文ID
    110001725506
  • NII書誌ID
    AN00189888
  • ISSN
    00111848
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • CiNii Articles

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