バスケト語のテンス・アスペクト体系

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抄録

本研究はバスケト語のテンス・アスペクト体系を近隣のオモ系諸語と比較しながら、語彙アスペクトの違いを考慮して、類型論的観点から明らかにすることを目的とする。バスケト語は類型論的には未完了(imperfetive :-are / -ire) と完了(perfective:-ine) が対立するアスペクト優位言語と思われる。進行形(progressive)は主動詞の未完了の形を基にして、現在と過去を表す存在動詞を付ける複合時制で表される。ところで異なる時間構造を持つ語彙アスペクト(アクチオンツアルト)がテンス・アスペクト体系に深く影響することはよく知られている事実である。そこで状態動詞、継続動詞、瞬間動詞に分けて、バスケト語の上記の形態がどのように現れるかを考察した。その結果以下のことが明らかになった。1. 動作動詞(継続動詞と瞬間動詞)は未完了と完了の対立が維持され、未完了で未来、完了で過去を意味する。一方、状態動詞は完了と両立せず、もし完了で使われた場合には起動あるいは結果の意味を持ち、動作動詞として解釈され、未完了では現在の意味を表す。2. 継続動詞の進行形が動作の進行を表すのに対して、瞬間動詞では、定義上動作の内部構造を持たないため、動作の反復として解釈され、文において通常主語や目的語の複数性を要求する。3. 習慣および反復に関して、バスケト語は習慣を表す形態的な区別を持っていないので、副詞を用いて表す。一方、反復動作は瞬間動詞が形態的な手段(-iritts)を持っているのに対して、継続相では副詞か動詞語根の重複を用いる。

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