〈原著〉長指伸筋に対する筋肉パルスが末梢循環に及ぼす影響

抄録

【目的】本研究は、長指伸筋に対する筋肉パルスが、刺激筋相当部位の温度と末端の温度にどのような影響を与えるかを観察する事を目的とした。【方法】研究の説明に同意を得られた健康成人16名(男性16名。年齢28.4±9.6歳)を対象とし、クロスオーバーデザインにて右下腿長指伸筋に1Hz、20分間の介入を行う実験と無刺激のコントロール実験を行った。測定項目は左右の長指伸筋相当部深部温度(熱流補償法に基づく)・足背・足底(皮膚温)及び体温変動の指標としての前額部中央深部温度を介入前と介入後に記録し、各実験データの正規性を確認後、対応のあるt検定にて前後差比較を行った。実験環境は室温26.0±0.6℃、湿度50.0±3.0%の恒温恒湿室で行った。【結果】体温変動の指標とした前額部深部温度は通電実験・コントロール実験ともに前後差に有意な差は認められなかった。長指伸筋相当部位の深部温度は、通電実験では通電側において介入前35.57±0.47℃、介入後35.85±0.46℃で変化量は0.28±0.37℃であり、測定値の前後差に統計上の有意差が認められた(p=0.004)。このデータ以外に前後差に有意差があった項目はなかった。足背・足底の皮膚温度は通電前後を比較すると通電後低下する例が多かった。【考察】筋肉パルスによる筋内循環の促進に関する研究はいくつかあるが、作用機転としては筋ポンプ作用による循環促進としている。本実験でも同様の機転で長指伸筋相当部の深部温度の上昇が起こったものと考える。また、足背・足底の温度低下については通電実験によく現れていることから、通電刺激が下肢末端の血管収縮を引き起こしたものと考える。【結論】長指伸筋に対し1Hzの通電実験を行ったところ、腓腹筋での研究と同様に通電相当部位の深部温度上昇と末端の温度低下が観察された。

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