分娩中の中枢神経症状を前兆として発症した羊水塞栓症の4例(Amniotic fluid embolism following the onset of neurologic symptoms during delivery: a case report in four patients)

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説明

<jats:title>要旨</jats:title><jats:p> 羊水塞栓症は致死率の高い産科合併症であるが,出血や呼吸・循環の異常が生じる前に認識し治療を開始することは困難である。今回,前兆としての分娩中の中枢神経症状で救急搬送された羊水塞栓症を,4例経験した。患者はすべて前医での分娩経過中に発症し高次医療機関である当院に搬送された。いずれも意識障害や痙攣,失語や視野障害といった中枢神経症状により脳卒中や子癇発作疑いでの搬送であったが,病着後の精査で頭蓋内の異常はなかった。また,病着以前に粗大な出血はなかったが,病着時の採血データで血清フィブリノーゲン値 <50mg/dLと高度な凝固異常を認め,本邦および欧米の臨床的羊水塞栓症の診断基準を満たしていた。疾患の性質上重症度に差はあるが,転帰として母体はすべて後遺症なく生存退院し,児死亡が1例だった。羊水塞栓症の典型的な症状は,分娩中・分娩後の突然の呼吸・循環不全と急速進行性の凝固障害とされている。また,約半数に発症前の痙攣や意識消失,死に至るような感覚や不安感,突然の胎児心拍低下などの前兆を呈するという報告がある。さらに,鑑別となる子癇発作や脳卒中では通常高血圧を伴う。重症妊産婦を受け入れる救急部門において,搬送患者が分娩中に非特異的な中枢神経症状を認め,とくに経過中に高血圧を伴わない場合は,羊水塞栓症を考慮して輸血などの準備を行う必要がある。</jats:p>

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  • CRID
    1871991017430979328
  • DOI
    10.1002/jja2.12354
  • ISSN
    18833772
  • データソース種別
    • OpenAIRE

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