翼竜類の解剖学・系統分類学・古病理学:中国産新標本に基づく洞察

書誌事項

タイトル
翼竜類の解剖学・系統分類学・古病理学:中国産新標本に基づく洞察
タイトル別名
  • Anatomy, Systematics and Paleopathology of Pterosaurs: insights based on new specimens from China
著者
周, 炫宇
学位授与大学
北海道大学
取得学位
博士(理学)
学位授与番号
甲第15600号
学位授与年月日
2023-09-25

説明

翼竜類は,ギリシャ語で「翼のあるトカゲ」を意味するpterosauros に由来し,Pterosauria (Diapsida, Archosauria) の飛行する爬虫類である。三畳紀末に出現し,白亜紀末に絶滅した。翼竜類は,非常に伸長した第四指(翼指),発達した前肢,貧弱な後肢,薄壁の中空骨といった,ユニークな骨格形状によって特徴づけられる。中国には,世界で最も重要な翼竜発見地がいくつもある.2022 年までに,10 科に属するおよそ62 属66 種の翼竜類が発見されている.最も古い中国産翼竜類の化石記録は,中期〜後期ジュラ紀のShaximiao 層で発見された.反対に,最も新しい中国産翼竜類の化石記録は,後期白亜紀のTangshang 層から発見された.中国産翼竜類はAngustinaripterus longicephalus (四川省自貢市, 中国西南部)とZhejiangopterus linhaiensis (浙江省臨海市, 中国東南部)を除けば,主に中国北部から産出している.特に,遼寧省西部とその周縁地域は最も代表的な発見地である.Tiaojishan 層(オックスフォーディアン階-キンメリッジアン階), Yixian 層(バレミアン階〜アプチアン階)とJiufotang 層(アプチアン階)である.翼竜類の胚や軟組織,移行期の形態を示すDarwinopterusmodularis,卵とともに保存されていたメスのKunpengopterus antipollicatus,最古の拇指対向性を示すKunpengopterus antipollicatus のホロタイプなど,最近の翼竜類における基盤的な発見研究のいくつかは,これらの地域からもたらされている.これらの発見により,この地域は,ジュラ紀の石灰岩層が広がるドイツ・Solnhofen や,白亜紀のブラジル・Santana 層群に匹敵する,世界で最も人気で興味をひく翼竜研究地の一つとなった.特に,原始型(短い首と長い尾をもつ),進化型(長い首と短い尾をもつ),遷移型(原始型と進化型の両方の特徴を併せもち,それらと区別される)の翼竜類が同時に発見された国は,世界で中国だけである.これらの発見は,翼竜類を理解する上でさらに重要な情報を提供する.本研究では,中国産の代表的なクレードを含む,3 つの型の翼竜類に関する見解を全て更新し,自身の翼竜研究フレームワークの全体像を構築する.解剖学,系統学,古病理学の手法を用いて,遼寧省西部とその周辺を含む地域から産出した3 つの型全ての多様な標本を研究しており,それらを以下に示す:1) 中国産原始型翼竜類の進展: この研究では, Tiaojishan 層からSinomacrops bondei と名付けられた新しいアヌログナトゥス科翼竜を報告した.この新種は,ほぼ完全な骨格を表し,これまで発見されたアヌログナトゥス科標本の中でも,有名で最もよく知られた標本の一つである.重要なのは,この標本が,外側面観で保存された頭骨を示す,史上初のアヌログナトゥス科標本であることだ.この発見は,本グループの解剖学的特徴やその系統学的位置づけに新たな光をあてた.また,本グループについて見解を示した.2) 中国産遷移型翼竜類の進展:この研究では,拇指対向性をもつダルウィノプテルス類翼竜であるKunpengopterus antipollicatus を報告した.このTiaojishan 層から発見された新種は,拇指対向性を示す初めての翼竜類であり,化石記録上,その性質を示す最も古い例の一つである.また,新種と既知種との比較に基づくダルウィノプテルス類の分類学的改訂も提示されている.3) 中国産進化型翼竜類の進展1:新属Huaxiadraco を含む,Sinopterus コンプレックスに基づく,中国産タペヤラ科の分類学的改訂も提示された.Jiufotang 層から新たに産出した6 種のタペヤラ科標本は,Sinopterus コンプレックス(Sinopterus とHuaxiapterus に分類され,分類学的な議論の焦点となっている,7 種の名目上の種からなるタペヤラ科のコンプレックス)を詳細に再検討する機会を与えた. 質的・量的解析を通して, Sinopterus dongiと“Huaxiapterus” corollatus の2 種のみが有効であるものの,“Huaxiapterus”が無効であることから,Huaxiadraco という新属をたてる結論に至った.4) 中国産進化型翼竜類の進展2: Jiufotang 層から産出したの新たなIstiodactyliform の標本は,ほぼ完全な骨格に基づくもので,これまで発見されたIstiodactyliform の中で最も知られた骨格標本であると言える。この新種は,翼竜類におけるエナメル上皮腫の最初の記録例となる。この病態について,組織学的分析を用いて詳細に調査された。

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