プラスチック原料のビスフェノールAは、ごく微量の暴露での悪影響が懸念される有害環境化学物質でもある。こうした化学物質の標的は、細胞核内に存在し、遺伝子の転写を制御する核内受容体であると考えられている。これまでに我々は、ビスフェノールAは核内受容体の一つであるエストロゲン受容体のみならず、エストロゲン関連受容体γ型とも結合することを見出した。本研究では、ビスフェノールA悪影響の分子機構の解明を目指し、エストロゲン受容体とビスフェノールAの構造活性相関解析研究や、代謝に注目し膵臓におけるエストロゲン関連受容体γ型の生理作用を明らかにした。
現代社会においては、さまざまな化学物質が環境中に放出されている。これらの環境化学物質の安全性の評価は、社会・国民の健康生活にきわめて重要である。現在、有害環境化学物質ビスフェノールAが示す、ごく微量の暴露で悪影響をおよぼす低用量効果は、未解明の課題となっている。本研究では、この解明の端緒として、ビスフェノールAが結合する複数の核内受容体が存在することに注目し、有意義な研究成果を得た。