本研究は明治時代に成立した活歴物と松羽目物の検討を通し、現代歌舞伎の形成過程を究明するためのものである。活歴物と松羽目物は明治歌舞伎の「古典化」、すなわちそれまで現在進行形の演劇であった歌舞伎がいくつかの型に収斂され定型化する一連の過程と密接に関わっている。従って、両ジャンルからみえる明治歌舞伎の「古典化」の様相を代表的な作品を選別して考察し、それが現代歌舞伎に残した痕跡を明らかにすることが主な研究内容になる。これらの研究を通し、最終的には欠如している明治後期演劇史の空白を埋めることに一助したいと考える。