本研究では、インスリンを投与したマウスを用いて骨格筋構成分子の濃度やその時間変化を大規模に定量し、その存在量・時間変化・分子間相互作用の特徴を明らかにした。また、インスリンに応答して時間変化が見られた代謝物・タンパク質(発現量もしくはリン酸化修飾量が変化したもの)・RNAおよびそれらの制御分子候補の間の相互作用ネットワーク(約1万ノード・2万エッジ)を構築し、インスリンにより骨格筋で誘導される分子制御の全体像を可視化した。
網羅的な分子定量から分子間相互作用ネットワークの構築・特徴解析・可視化までのワークフローの開発により、大規模データと既存知識を統合して生物組織において誘導される分子制御の全体像の理解が可能になった。このアプローチは拡張性が高いことから、適用範囲は骨格筋代謝に限らない。今後、より幅広い生命現象の制御メカニズム理解への応用が期待される。