ナナフシの卵を利用する昆虫について分かっていることはわずかだが,数の多い熱帯林では魅力的な資源になっていると考えられる.本研究では,ナナフシ卵の専門寄生者,ナナフシヤドリバチ類,カブトバチ類に着目する.彼らは,東南アジアで最も多様化が進んでいるにも拘わらずその全容がよく分かっていない.一方で,ナナフシ卵を運ぶ,あるいはアリに運ばれた卵から羽化することが知られている.なぜ,寄主卵の移動が必要なのだろうか.鍵となるのは,同じく卵を運ぶアリの存在である.本研究では,寄生蜂の分類・系統関係からナナフシ卵寄生性の起源と多様化の背景を明らかにし,ナナフシ卵を運ぶ「アリ」と「寄生蜂」の関係に迫る.