細胞成長因子の遺伝子移入による発生機序の解析
研究課題情報
- 体系的番号
- JP63560255 (JGN)
- 助成事業
- 科学研究費助成事業
- 資金配分機関情報
- 日本学術振興会(JSPS)
科研費情報
- 研究課題/領域番号
- 63560255
- 研究種目
- 一般研究(C)
- 配分区分
-
- 補助金
- 審査区分/研究分野
-
- 農学 > 畜産学・獣医学 > 畜産学
- 研究機関
-
- 東京大学
- 研究期間 (年度)
- 1988 〜 1988
- 研究課題ステータス
- 完了
- 配分額*注記
- 1,700,000 円 (直接経費: 1,700,000 円)
研究概要
1 C57B/6系マウスの受精卵の雄性前核に、ヒトTGF-β遺伝子にSV-40のプロモターターを接続した組み換え遺伝子を注入した。注入が成功した46個の卵のうち、翌日までに2細胞期にまで発達したものは11個(23.9%)しかなかった。一方、ヒト成長ホルモン遺伝子を注入した卵では68%(51/75)が翌日2細胞になった。従ってTGF-β遺伝子注入による2細胞への発生阻害は、受精卵において合成されたTGF-βに起因していると考えられる。さらにTGF-β遺伝子を注入した卵を培養した培養液で無処理の1細胞受精卵を培養したところ、2細胞まで発達した卵が認められなかった(0/12)。以上より、マウス受精卵はTGF-β様物質のリセプターを有しており、TGF-β様の成長因子は初期発生に影響を与えると考えられる。 2 TGF-βと類似の構造を持つEDFを含む培養液で、BDF、C57B/6、ICRのマウスの受精卵を24時間培養したところ、ICRで2細胞への発生率が低下していた。ところがさらに培養時間を延長したところ3細胞以降へ発生したものは、対照群で5.4%(3/37)であるのに対し、EDF群では31.9%(15/47)で有意に高い値を示した。ICRはラットと同様、1細胞から培養すると発生が2細胞で中止する、いわゆる2Cell-ブロックが起きる系として知られており、本実験の結果からEDFには、2-Cellブロックを解除する働きがあると考えられる。また、1細胞から2細胞までの間にEDFと共に培養した卵で3細胞以降へと発生した卵は11.8%であるのに対し、2細胞に発達してからEDFを培養液中に入れた時は48.8%の卵が細胞以降へと発達した。したがって、EDFか2-Cellブロック解除の効果を発現する時期は2細胞に達してからであり、それ以前では卵の発生にむしろ悪い影響を与えると考えられる。