本研究では、グラフ理論で重要な役割を果たす隣接行列と分子の強束縛近似におけるハミルトニアン行列との類似性を利用する。隣接行列のn乗の(i, j)成分はグラフ上で頂点iからスタートし、頂点jに至る長さnの経路の個数に等しい。(i, i)成分であればグラフ上で頂点iからスタートし、頂点iに戻ってくる長さnの経路(閉路)の個数に等しい。これはn次のモーメントと呼ばれる。このようなグラフ理論上の知見を、分子デバイスや金属クラスターのハミルトニアン行列に適用する。