ビッグデータでは複雑な(=未知パラメータが多い)統計モデルが用いられる,典型的な例として,多変量正規分布を考える.パラメータだけでなく,確率分布の関数形も推定するのが予測問題であり,これをBayes統計学の枠組みで考察するのがBayes予測問題である.推定の良さをα-ダイバージェンスと呼ばれる確率分布間の「距離」で測ることにする.無情報量事前分布と呼ばれる事前分布に基づく最適予測分布(=Bayes予測分布)は一定のよい性質を持つことが知られている.このBayes予測分布を頻度主義の意味で改善することからスタートし,Bayes予測問題と熱力学に通底する基本構造を明らかにする.