本研究は,土地不動産関係史料,地籍台帳・地積図などを素材として,①明治後期・大正期の東京市麹町区内幸町1丁目における三菱の土地賃貸借市場と不動産経営を分析し,②借地人がなぜ内幸町の土地を賃借したのか,プロフィールと背景を探りながら,近代都市・東京における地主―借地人の構造を動態的に分析することを目的とする。本研究は,近代日本の土地所有史を,従来のように供給側から分析するだけでなく,借主側から見た借地の有効的な空間利用や,法制史・税制史や建築史,歴史地理学などと絡めた学際的な検討を加えることで,極めて意義ある研究だといえる。